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<染色Q&A> 染色技術とその応用

回答者=今田技術士事務所 工学博士 今田邦彦

■ 反応染料の染色

33. 反応染料の洗浄工程について

Q:

綿ニットの吸尽染色を行っていますが、ラボでの試染物に比べて湿潤堅牢度が悪い傾向にあり、工場でのソーピング工程に問題があるのではないかと考えています。反応染料のソーピング工程についての注意点を教えてください。

A:

反応染料による染色後の洗浄が不充分な場合、未固着染料(主として加水分解体)が繊維上に残留し、堅ろう度不良となります。染色後の洗浄を完全に行えばこの様なトラブルは回避出来ますので、使用する染料の選定や、ソーピング条件の適正な設定が望まれます。


1) 使用する反応染料のタイプと洗浄性について

染料自体の洗浄性は、染料の直接性に関係します。直接性の低い染料ほど洗浄性は優れていますが、直接性の低い染料は吸尽染色時の染着率が低く繊維との反応効率が悪いので、実用上吸尽染色に不向きとなります。

このように染着率と洗浄性は矛盾する関係にありますが、スルファートエチルスルホン系染料の場合には、反応基部分の化学構造がアルカリ添加前、アルカリ添加後及び加水分解体の間で変化し、それに対応してセルロース繊維に対する親和性も変化しますので、染着率と洗浄性の矛盾をある程度解決出来ます。

吸尽染色条件下ではビニル体(-SO2CH=CH2)の直接性が高く反応固着に有効に働き、染色後の加水分解物のヒドロキシ体(-SO2C2H4OH)は直接性が低いため、洗浄性を向上させています。(注:スルファートエチルスルホン反応基(-SO2C2H4OSO3Na)は、アルカリ添加後直ちにビニル体(-SO2CH=CH2)に変化し、染色後の残浴や繊維表面の未固着染料はヒドロキシ体(-SO2C2H4OH)になっています)

スルファートエチルスルホン/モノクロロトリアジン異種二官能型染料であるスミフィックス スプラ染料の場合にも、スルファートエチルスルホン系染料の特徴がそのまま生かされて、ビニルスルホン体で親和性が高く、高い固着率が得られ、加水分解体になると親和力が低下するため洗浄性も良好となります。

第1表に反応染料の反応基の形と親和性の関係の例を示しました。

第1表 反応基と直接性の関係
色素母体 X 直接性(吸尽率)
(Na2SO4 50g/L)
-SO2CH2CH2OSO3Na   20 %
-SO2CH=CH2 80
-SO2CH2CH2OH 38
75
76
43
82
63


2) 洗浄工程の条件について

未固着染料を効果的に除去するためには、ソーピング温度、時間、ソーピング剤の選定、機械的操作など処理物の形態を考慮して適当な条件設定が必要です。


@ 無機塩の影響

反応染料は、無機塩を含まない浴では直接性は低くなり容易に除去されますが、工業的な染色では染色工程で添加した塩類がソーピング浴にも多少残存することが多く洗浄性が悪くなります。従って、水洗工程では洗浄用水を十分に交換し、塩類の残存の無い状態でソーピングを行う必要があります。ソーピング剤、特にアニオン系活性剤は無機塩類を含むことがありますので、直接性が増し除去性が不良となる場合がありますので注意する必要があります。

第2表 中性塩濃度と直接性
無水芒硝
Sumifix
直接性
無添加 25g/L 50g/L

Supra Yellow 3RF 150% gran.
エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
0
5
3
39
49
39
52
66
52
Supra Br. Red 3BF 150% gran. エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
0
0
0
23
33
30
41
52
46
Supra Blue BRF 150% gran. エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
0
7
0
48
67
61
64
83
72
Supra Navy Blue BF gran. エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
0
0
0
10
47
38
51
65
53
Yellow GR 150% gran. エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
3
-
5
16
38
20
23
68
29
Br. Blue R special エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
3
-
4
22
81
25
33
95
35
Black B エステル体
ビニル体
ヒドロキシ体
4
-
4
25
47
25
37
69
35
(注) 試験条件: 被染物 スミフィックス スプラ染料
スミフィックス染料
未シルケット加工綿
シルケット加工綿
  染色濃度 スミフィックス スプラ染料
スミフィックス染料
3%(o.w.f)
1%(o.w.f)
  無水芒硝 無添加、25g/L、50g/L  
  温  度 スミフィックス スプラ染料
スミフィックス染料
60℃
40℃
  pH 6.8  
  浴  比 1:20  


A 洗浄温度の影響

未シルケット加工綿をスミフィックス染料(2%o.w.f)で染色した後、軽く水洗し、2分間所定温度でソーピングを行い、脱水後、染色布上の未固着染料の残留度を調べるために90%DMF水溶液で抽出し(固着染料は抽出されません)、比色定量した結果を第1図に示しました。第1図よりソーピング温度は高いほど洗浄性が良い事がわかります。

第1図 ソーピング温度と未固着染料の残留度(対使用染料)

ソーピング温度と湿潤堅牢度の関係例を第2図に示しました。

第2図から、湿潤堅牢度は90℃洗浄と100℃洗浄の間にも差異があり、100℃洗浄の方が良いことから、ソーピング温度についてもきっちりとした管理を行うことが薦められます。

第2図 

ソーピング温度と湿潤堅牢度の関係
洗浄温度と湿潤(アルカリ堅牢度)
(画像をクリックすると拡大します)


B 洗浄助剤の影響

第1図ではソーピング助剤としてアニオン系洗浄剤を用いた場合と非イオン系洗浄剤を用いた場合を比較していますが、洗浄剤の種類による差異は少なく、洗浄温度の影響の方が大きいことがわかります。

なお、ソーピング剤、特にアニオン系活性剤は無機塩類を含むことがあり、直接性が増し除去性が不良となる場合がありますので注意する必要があります。

また、染色時に使用したアルカリの除去を促進するために酸による中和を行う場合がありますが、この場合使用する酸は酢酸等の揮発性の酸を用いることが奨められます。
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