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<染色Q&A> 染色技術とその応用

回答者=今田技術士事務所 工学博士 今田邦彦

■ 反応染料の染色

35. フィックス処理と染色堅牢度

Q:

綿ニットの染色を行っていますが、スポーツ用途に用いるため堅牢度の優れた染色物を求められています。フィックス処理剤を用いて堅牢度の向上を図りたいと考えていますが、木綿用フィックス剤の種類と効果、具体的な使用方法を教えてください。

A:

フィックス処理は、湿澗堅牢度を向上させる目的で行います。

染色後繊維上に残存する未固着の反応染料は、親水性基(-SO3Na)をもっており水溶性であるため、水の存在で染料アニオンとして解離し湿潤堅牢性が不良となります。フィックス処理によりこの未固着の染料にカチオン系高分子物質であるフィックス剤(FX)が作用し、染料の親水性基は次のように封鎖され、水不溶性のD-SO3・Fの型になり、湿潤堅ろう度が向上します。

D-SO3-Na+FX→D-SO3・F+Na・X

このように、フィックス剤はカチオン性を示す高分子物質であり、市販されているものとしては、ポリアミン系、ジシアンジアミド系およびポリカチオン系などのタイプがあります。その一般的な特徴を第1表に示しました。

第1表 各種フィックス剤の特徴
フィックス剤のタイプ 特徴
ポリアミン系 ・フィックス効果がよい。
・変退色が少ない。
・耐光堅ろう度の低下が少ない。
ジシアンジアミド系 ・フィックス効果がよい。
・変退色が少ない。
・耐光堅ろう度が低下しやすい。
・安価
ポリカチオン系 ・塩素堅ろう度の低下が少ない。
・耐光堅ろう度の低下が少ない。
・処理変色が少ない。
・フィックス効果はやや低い。

一般に反応染料の染色物には、ポリカチオン系あるいはポリアミン系のフィックス剤が用いられます。同じポリカチオン系あるいはポリアミン系のフィックス剤で処理しても、処理剤により湿潤堅ろう度の向上度合、変退色、耐光堅ろう度や塩素堅ろう度の低下の度合などが異なっていますので、市販のフィックス剤の性能を十分吟味して使用することが重要です。(なお、含銅ポリアミン系フィックス剤は、処理による変退色が著しいために、反応染料による染色物の後処理に対しては適当でありません。)


1)フィックス処理と水堅牢度、耐光堅牢度

第2表にフィックス処理後の染色物の水堅牢度および耐光堅牢度の例を示します。

第2表 フィックス処理後の堅牢度
染色布 フィックス剤(2g/L) 変退色 水堅ろう度 耐光
堅ろう度
綿汚染 羊毛汚染
Sumifix Brill. Red G special 染色布
(6% o.w.f.)
未処理
ポリアミン系
 〃

(A)
(B)
ジシアンジアミド系
 〃
(A’)
(B’)
基 準
3-4(B)
4-5(B)
4 (B)
3-4(B)
3-4
5
4-5
4
4-5
2
5
5
5
4
4-5
4
3-4
3-4
3
Sumifix Supra染料
配合染色布
(Brown色)
未処理
ポリアミン系
 〃

(A)
(B)
ジシアンジアミド系
 〃
(A’)
(B’)
基 準
4-5(Y)
4-5(Y)
4-5
4-5
4
5
5
5
5
5
5
5
5
5
4
4
3-4
3-4
3

(注) フィックス処理 : 60℃
  堅ろう度試験 : 水堅牢度 : JIS L-0846 B法
耐光堅牢度 : JIS L-0842
  判定表示 : グレースケールによる。但し、耐光堅牢度はブルースケールによる判定
表示   Y : 黄味 B : 青味

第2表のように同じポリアミン系のフィックス剤で処理しても、市販品の品目により湿澗堅牢度の向上度合や変退色、耐光堅牢度の低下の度合は異っておりますので、使用に当たってはその性能をよく吟味することが重要です。

耐光堅牢度の良い染色物を求められる場合には、フィックス剤による向上効果は期待できないと考え、耐光堅牢度の良い染料を選択使用することが薦められます。


2)フィックス処理と汗−耐光堅牢度

フィックス処理により汗−耐光堅牢度についても耐光堅牢度と同様に低下する傾向にありますが、汗−耐光堅牢度が向上効果のあるフィックス剤も市販されています。このようなフィックス剤は成分中に紫外線吸収剤(カーシート用の耐光堅牢度向上剤と類似の成分)を含んでいるもので、この成分は綿繊維に対する親和性が低いため、繰り返し洗濯により効果が低下します。

このタイプのフィックス剤はトラブル回避の目的に有効ですが、価格が高くつくこともあり一般的な使用には適しません。汗−耐光堅牢度が問題となる場合には汗−耐光堅牢度の優れた染料を使用し、フィックス剤としては通常のフィックス剤で堅牢度低下の少ないものを使用する事が薦められます。


3)フィックス処理と耐塩素処理水堅牢度

フィックス剤の選定に際しては、塩素堅牢度への影響についても留意する必要があります。フィックス処理を行った染色物の塩素堅牢度、特に水道水のような比較的低濃度の活性塩素による変退色が問題になることがあります。これは、フィックス剤中のアミン類が、水道水の活性塩素を吸着する能力が強いため、フィックス処理がほどこされていると活性塩素を蓄積し、繊維上の反応染料の変退色を促進するためと考えられています。

なお市販フィックス剤の中には耐塩素性向上効果を有するものもありますが、このようなフィックス剤の作用機構はフィックス剤が塩素を消費するものであるため、試験法にJIS法やISO法のような試験に用いられる有効塩素の量が限定される場合には堅牢度向上効果が認められます。一方、水道水を用いた流水塩素試験法(レナウン法など)では試験系中に濃度は低いが大量の塩素が存在するため、フィックス剤に消費される塩素の量に比べて試験系中に存在する塩素量が極めて大きいため、耐塩素性向上効果が認められないケースもありますので注意を要します。


4)フィックス処理の方法

ウォッシングオフ性の良いビニルスルホン系や異種二官能系の反応染料を用いた場合には、十分な洗浄を行えばフィックス処理を省略できます。しかし、バラ毛染めや極濃色などの染色物は、未固着染料の完全除去が難しい場合がありますので、このような際には湿潤堅牢度を向上させる目的でフィックス処理を行います。フィックス処理は、一般にソーピング、水洗いを完了した後に行います。織物などの場合は、樹脂加工浴にフィックス剤を併用して樹脂加工と同時に行うこともできます。フィックス剤は、耐光、摩擦、塩素堅牢度の低下がなく、しかも変退色の少ないものを用いる必要があります。

通常、浸漬法の場合は、1〜4%(o.w.f.)又は1〜3g/Lのフィックス剤を用い、60℃で10〜20分間処理します。

パッド法の場合(オープンソーパーの時は最終槽を用いる)、フィックス剤10〜50g/L溶液をパッドし、1〜4%(o.w.f.)吸収するように絞り、乾燥します。樹脂加工浴に添加する場合は、樹脂加工浴への添加薬剤との相容性に注意する必要があります。

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